初めて司会を引き受けることに
原稿が届いたのは当日朝!?
数年前、私がまだ舞台俳優を目指していた頃の話です。
友人が「もうすぐ会社の行事があるんだけど司会者が手配できてなくて…。あと1週間なのにどうしよう…」。 …と。
どうやら社員総会で司会が直前まで決まらず、友人はとても困った様子でした。
困る友人の姿を見て、放っておけませんでした。
「私は台詞の勉強はしているから、決まった原稿を読むことはできる。
プロの司会者みたいなクオリティには届かないかもしれないけれど、
どーーーしても司会が見つからなかったら協力するから言ってね」と思わず声をかけました。
結果、友人から「ぜひお願いしたい」と、まさかの司会デビュー。
舞台経験はあるものの、ちゃんとした司会を担当することは初めて。
でもこれは貴重なチャンスだ!と思い、思い切ってご依頼をお受けすることにしました。
ですが…最終版の司会原稿データをいただけたのが、本番当日の朝だったんです。
直前まで話す内容が定まらない、これは会社・組織では割と普通にあることではないでしょうか。
きっと前日の夜遅くまで、担当の方が作って下さったのだと思います😿
せめて「あ行」と「呼吸」だけでも意識してみたら…結果は大成功!
ほぼ初見の原稿。
プロのアナウンサーや司会者の方であれば、初見でも完璧に発音ができますが、私はそうはいかない。
本来であれば、「言いにくい箇所」や「聞こえにくい箇所」を事前にチェックして、
練習したかったもののそうはいかず、心臓はバクバク。
「せめてこれだけは」と思って、当時の私が意識したのが、この2つです。
事前練習なしで読み上げる時に意識したこと
1.口角を上げて「あ行」の言葉を意識する (声が明るくなる)
2.腹式呼吸を意識する (落ち着いた雰囲気を出せる)
意識したことその1:口角を上げて「あ行」の言葉を意識する
「あ行」=あ・か・さ・た・な・は・ま・や・ら・わ の音が出てきたら、
明るい音になるよう心掛けました。
中でも、単語の1音目が「あ行」の時は、特に明るくなるよう意識しました。
「ありがとうございます」
「ただいまより、」
「かぶしきがいしゃ」
「それではさっそく」
などです。
意識したことその2:腹式呼吸を意識する
緊張のあまり早口にならないよう、常に腹式呼吸に集中し、深い呼吸を意識しました。
話している最中はあまり余裕がありませんでしたが、
他の人が話している間や、映像が流れている間、
ちょっとした時間が出来た時に、ゆっくりと腹式呼吸をして、心を整えました。
何とか最後まで乗り切り…
無事に大きなトラブルなく司会の仕事を終え、ほっと一息ついたのでした。
そして行事の最後に、その会社の方が、私のことを壇上で紹介してくださいました。
「本日司会を務めていただいたのは、○○さん(私の友人)の、ご友人です。」
まさかそのように紹介していただけるとは思っておらず、恥ずかしいやら嬉しいやら。
そして参加者の方から驚きの一言が。
「プロの人かと思った!」
もちろん、本当のプロのレベルには程遠かったと思います。
それでも思わぬ評価に、少し照れくさいけれど大変嬉しい経験でした。
「あ行」が明るく発音できれば、声全体が明るくなる
明るい声の正体は「あ行」
「明るい・クリアな声」の人って、声のボリュームはそこまで大きくないのに、
スッと耳に入ってきませんか?

明るい声の人は「あ行」の発音がとっても明るいよ!
日本語の発音の中でも “あ行” は口の開き方が一番大きい母音です。
そして、あ行の言葉は、い~お行に比べて、出現比率がとても多いです。
原文 | 母音 |
---|---|
おはようございます | おあおーおあいあう |
ありがとうございます | あいあおーおあいあう |
お世話になります | おえあいあいあう |
お待たせいたしました | おああえいあいあいあ |
いかがでしょうか?
母音は5つあるのに、圧倒的に「あ」の出現率が高いフレーズがたくさんあります。
上下に口を開けるのではなく、口角を上げる
あ行は「口を上下に大きく開く」というイメージがありますが、
実はこれでは明るい声を発することはできません。
「口を上下に大きく開ける」ことよりも「口角を上げる」ことを意識した方が、
クリアで明るい音となります。
人間の顎の構造上、口を大きく開ける=顎を下げる ということです。
よって、口を上下に開けると、下方向に空いてしまいがちです。
上下に開いた口↓

口角を上げて開いた口↓
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口角を上げて開いた口の方が、明るい「あ!✨」が聞こえてきそうではありませんか?
ほんの少し、口角をキュッと上げてみるだけで、声の印象がガラッと変わるはずです。
特に、単語の1音目が「あ行」のものは、意識しやすいです。
<例>
・ありがとうございます
・ただいまより、かぶしきがいしゃ○○の…
・さて、みなさま…
出現率が多い「あ行」を常に明るく発音できれば、
他の「い・う・え・お行」の音も、つられて明るくなる傾向があります。
反対に「あ行」が暗いと、声が暗くなったり、下方向に落ちてしまう。
その結果、声全体がくぐもって聞こえてしまうんです。
舌はリラックス、床に寝そべるイメージで
口の中が部屋だとしたら、舌は脱力して、床にぺったり寝そべるイメージです。
この時に無理に力が入ると、舌の根本(=舌根)は上がってしまいます。
舌根が上がると声の通り道が狭くなり、硬い声になってしまいます。
舌が固まると口全体(場合によっては身体全体)に力が入ってしまいます。
ポイントは「舌に余計な力を入れないこと」。
リラックスすることで母音の響きがクリアになり、“あ行”が明るく聞こえるんです。
口の中も広くなり、声の通りも良くなります。
呼吸を正せば、グッと落ち着いた印象になる
深い呼吸のための 頭の位置

深い呼吸のためには、まず姿勢を整えることから!
声を届けようとするあまり前のめりになり、頭がニュッと前に出てしまっていませんか?
必死に声を届けようとすると陥りがちなこの姿勢、実は逆効果です。
むしろ余計な力が入ることで喉に負担がかかり、最悪の場合、声帯・喉を損傷してしまいます。
前のめりになっても、声が届く効果はありません。
それよりも、力を抜いてまっすぐ立つ(もしくは座る)ことが大切です。

頭は背骨の真上に”乗せる” イメージを持ってみると良いでしょう。
背筋を伸ばすのに余計な力はいらない
「背筋を伸ばして!」と思うと、どうしても力が入ってしまうことがあります。
そこで私は、「尾てい骨 ~ 背骨 ~ 頭頂部」を積み木だとイメージしています。
前後左右にズレたた積み木はぐらぐら・ゆらゆらしてしまい、
それを支えるために、無意識のうちに余計な力が入ってしまいます。
まっすぐ、スッと積み重なれば、余計な力はいりません。
「背筋を伸ばす」と力んでしまう人は、
「まっすぐ積み上げて、力を抜く」ようにイメージしてみてください。
背骨のイメージ↓

これは立っている時も、座っている時も、どちらでも有効です。
特にデスクワークが多い方は、ふと気が付いたときに意識してみてください。
私もPC仕事が多いのですが、思い出した時に「積み木積み木…」と意識することで、
「姿勢がいいですね」と言っていただけることが増えました。
腹式呼吸で落ち着いた印象に
多くの人は、普段は「胸式呼吸」で呼吸をしていますが、
ここぞというときは「腹式呼吸」を意識することがおすすめです。

腹式呼吸を使うと、ぐっと落ち着いた印象になるよ!
ではなぜ落ち着いた印象を与えるために、「腹式呼吸」を行うのか?
発声の鍵と言われる「腹式呼吸」には、沢山のメリットがあります。
【腹式呼吸のメリット】
・より多くの酸素を取り込めるため、息継ぎの回数が減り、長いフレーズで話せる
・胴体が広がり共鳴することで、声の響きが広がる
・姿勢が良くなり、声の通りがよくなる
・姿勢が良くなり、見た目の印象もアップする
腹式呼吸を行う=意識的に息を吸う・息を吐く ことになります。
ゆっくりと息を吸い・息を吐くことは、
「あわわわ(@_@)💦」と慌てた状態から回避することに有効な手段です。
ゆっくり落ち着いて呼吸をしている人が慌てている様子って、あまり想像できませんよね。
内心でドキドキしていたとしても、他人からは気づかれにくいです。
実際、私が初司会業をやった時は内心バクバク・ド緊張だったのですが、
「落ち着いて話されてましたね~」と言っていただけました(笑)
反対に、呼吸が浅いと酸素が十分に取り込めず、息が続きません。
息が続かないと、それをカバーするために早口になってしまいがちです。
呼吸で「お腹」は膨らまない?
腹式呼吸と聞くと「お腹を膨らませて息を吸う」というイメージがあるかもしれませんが、
お腹自体に空気は入りません。
あくまで空気が入る場所は肺です。
そしてその肺は、肋骨の下までしかありません。
「横隔膜を下げながら息を吸うことで、その圧力で内臓が押し出される」
これが、お腹が前に膨らんでいるように見えるメカニズムです。
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胸式呼吸では、肺の上部しか使えておらず、呼吸が浅い状態です。
腹式呼吸は横隔膜を大きく動かすことで肺全体を使い、より多くの酸素を取り込むことができます。

腹式呼吸については、こちらの記事でより詳しく紹介しています。
よければ合わせて参考にしてみてください!
→ メリットたくさん!腹式呼吸のメカニズム
まとめ
最後に、記事の内容をおさらいしておきましょう!
◆「あ行」の音が出てきたら、明るく発音する
・特に単語の1音目に「あ行」が出てきたら要チェック
・上下に口を開くのではなく、口角を上げる
・舌はリラックス
◆落ち着いて話せるよう、腹式呼吸を意識する
・頭をニュッと前に出さず、背骨の真上に乗せるイメージ
・背骨~頭をまっすぐ積み上げて、力を抜く
・腹式呼吸で意識も雰囲気もぐっと落ち着かせる
一つ一つは難しいことでは無いかもしれませんが、
慣れるまでの間は、全部を一度に実践することは難しいかもしれません。

どれか1つでも意識できれば、印象は変わるよ!
難しく考えず、楽しむ感覚でぜひ活用してみてください!
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